~フィデリティ・インターナショナル ポートフォリオ・マネージャー レイモンド・マー氏~
2011年09月14日
中国の消費市場の規模は、2ケタ近い中国全体の経済成長をさらに上回って成長することが期待されているという。中国消費のエキスパートであり、7月5日に新規設定された「フィデリティ・消費関連中国株ファンド」の運用担当者であるレイモンド・マー氏が7月20日に来日、「中国関連消費株の魅力」をテーマに行った講演会の内容を抜粋して紹介する。
中国における「消費拡大」の背景
内陸部の消費潜在力に期待/中国経済の現状
バブル崩壊を危惧(きぐ)する声もあるが、われわれはまったく別のストーリーを想定している。
中国は1960年代後半の日本、あるいは85年の韓国のような"離陸期"にある。現在、1人当たりGDP(国内総生産)は5000米㌦程度。GDPに対する消費の割合について見ると、先進国はもちろん、タイやインドが50%を超えているのに対し、わずか35%程度にとどまることから、今後の「消費拡大」余地は極めて大きいと思われる。
確かに、上海や北京など中国東部の沿岸部に限っていえば、ひところのような急成長はひとまず一服といった状況だが、注目すべきは内陸部。沿岸部が80年代の日本だとすれば、50年ごろの状況がいまだ残されており、これら潜在力の大きい内陸部の存在によって、中国はバブルにならずに、今後も長期の成長が続くことが見込まれている。
中間層拡大がもたらす消費パターンの変化
内陸部の都市化に伴い中間層・富裕層が急速に増加することで、中国全体の消費パターンが大きく変化するという点こそが、今後の成長において非常に大きな意味を持つ。ひと昔前の中国は貧しく、人々は手元に余ったお金はすぐに貯蓄し、質より安さを重視した購買行動が一般的だった。しかし、近年台頭しつつある中間層の消費パターンは"生活の質の向上"に重きを置き、いわゆるブランド物も積極的に取り入れる。
「消費経済」へかじを切った政府の取り組み
人件費が高騰し、かつての"世界の工場"といった輸出中心による成長は望めず、既にインフラ投資も一巡。中国は現在、内需主導経済へのシフトを強力に推し進めており、2011年の全国人民代表大会では、個人所得税の減税、あるいは、農村部において医療など社会整備を進めることで地域間格差を是正するなどして国内消費水準の引き上げを図ることがしっかりと掲げられた。
さらに中国では10年9月に法定最低賃金が大幅に引き上げられ、賃金は年間15%程度上昇。今後も年7―10%程度の上昇が続いた場合、17年には10年の約2倍の水準に達すると考えられている。
こうした変化は既に現実のものとなっており、例えば中国の小売売上高は過去10年間、平均で年30―50%増を続けている。
懸念材料①インフレ:
インフレにはさまざまな要因がかかわっているが、とりわけ金融政策の影響を大きく受ける。マネーサプライとの相関関係が高く、マネーサプライが上昇した6カ月から1年後にインフレ率が押し上げられるといった傾向が見られる。
もちろん政府はインフレの問題を強く認識している。金融引き締め策を続けており、その結果はおそらく今年度の第4・四半期ころに表れて、インフレ率はかなり落ち着きを見せるだろう。
また、中国のインフレは主に食料品に表れており、これは十分コントロール可能だと考える。例えば足元では豚肉価格が高騰しているが、今後数カ月のうちに生産が拡大されて供給量は高まるだろう。
インフレ率については6月の6.4%を天井と見込む投資家やエコノミストが多かった。確かにインフレ率はやや落ち着きを見せたものの、今度はCPI(消費者物価指数)の高止まりを懸念する声も。足元の金融引き締めや欧州の債務問題、米国の量的緩和など、方向感を狂わす出来事が頻発しているものの、インフレ抑制効果が表れる第4・四半期あたりのCPIが4%未満に収められれば、明確な方向性が見えてくるだろう。
懸念材料②人民元高:
人民元高は不動産価格あるいは株式市場のプレミアムを生む。為替が自由化されると当然、バリュエーションは妥当なレベルに調整されるが、向こう2―3年内の完全自由化はないとみている。フェアバリューがどこかは分からないが、人民元高は今後も確実に継続するだろう。
外国人投資家に対する人民元への投資規制は依然として存在するものの、非常に緩やかなものに変わりつつある。人民元相場は上昇傾向にあり、容易に米ドル換算できるようになるなど、実質的な人民元の国際化は進んでいる。
懸念材料③高齢化:
おそらく想定よりも早いペースで進むだろう。15年もしくは16年には労働力不足に転じるとみている。一人っ子政策により新たな労働力の提供が制限されるためだ。彼らは教育レベルが高く、いわゆる単純労働者は今後、減少することが予測される。成長率はこれまでのように年10%とはいかないものの、7―8%でも健全なペースといえるような状況に経済構造自体が変化していくだろう。
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「消費関連中国株」の現状
先述したように、中国の小売売上高は拡大傾向にあり、高シェアを有するリーダー的な企業に投資するだけで、大きなリターンが十分期待できる状況だ。
ところが、中国株を投資対象とする既存ファンドの多くがMSCIチャイナをベンチマークとしており、その中身を見ると、銀行やエネルギー関連など時価総額の大きな国営企業が大多数を占めている。これらは国の成長の初期段階に欠かせない輸出あるいはインフラ投資の恩恵を受けるような銘柄群であり、中国は既に次の成長ステージ、内需拡大の経済成長モデルへの転換を推し進めている。
MSCIチャイナにおける消費関連株の割合は23%程度にしかすぎないが、これらは市場指数を大きく上回って推移しており、とりわけ「生活必需品」の伸びが目覚ましい。MSCIチャイナと、生活必需品セクターを抜き出した「MSCIチャイナ一生活必需品」のパフォーマンスを比較すると、01年6月末を100として指数化した場合、11年6月現在、前者が300ほどにとどまるのに対して、後者は700ほどと圧倒的な伸びを示している。
幅広い投資アイディアが潜在:
中国の消費関連株には、市場に織り込まれていない投資アイディアも豊富に存在する。例えば自動車メーカーのBYD。もともとはノキアのバッテリーを製造する会社だったが、02年に小さな自動車製造工場を買収し、昨年は50万台を販売するレベルにまで成長した。中国の自動車市場は外資メーカーにも開かれており、トヨタやフォルクスワーゲンは10年、20年もの間、販売を続けている。それでも中国市場は非常に大きく、BYDのようにゼロから立ち上げた後発企業が追随できる余地を十分に残している。(Y)
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「フィデリティ・消費関連中国株ファンド(3か月決算型/1年決算型)」
概要:7月5日設定。本店所在地が中国または香港にあるか、あるいは主たる業務活動が中国または香港にあり、かつ、主として中国の消費者向けの商品・サービスの開発、製造、販売に従事している企業が発行する株式を主な投資対象とする。ベンチマーク設定なし。原則、為替ヘッジは行わない。
主な特徴:新たなステージに入った中国消費市場における新たな成長株への投資機会の提供を目的とする。香港ドル経由で人民元建て資産へ投資するため、為替益の獲得が期待できることも特徴の1つ。
投資対象:対象国は、数ある新興国の中でも中国に限定。理由は「銘柄数の多さ」にある。消費関連株に限定しているにもかかわらず、当ファンドのユニバースは400銘柄あり、うち100銘柄程度に投資している上に、年間50―100銘柄の上場が想定されている。
運用実績:主な投資先「フィデリティ・ファンズ―チャイナコンシューマー・ファンド(11年2月23日設定)」の6月末現在の設定来リターンは8.8%、3カ月リターンは6.1%。一方、MSCIチャイナの同期間のリターンはそれぞれ5.1%、▼1.9%。













